素敵な勘違い 〜負け組同士のラブバトル〜
「時々俺の所に来る彼女とは、別れた」

「えっ?」

「“別れた”というのは正確じゃないな。正確に言えば、関係を絶った、だ」

「…………?」

「彼女の事は後で説明しようと思ったが、それでは卑怯なんで今言うよ。彼女はね、兄貴の嫁さんなんだ」

「…………えっ?」


それはあまりに突飛な話で、私が頭で理解するのに数秒掛かってしまった。

その話が本当なら、あの超美人な彼女は阿部和馬の義理の姉、という事になると思う。そんな事ってあるんだろうか。というか、あっていいんだろうか……


「驚いたろ?」

「う、うん……」

「兄貴は交通事故が元で、不能になっちまったんだ。不能って解るよな?」

「あ……うん、解るわ」

「それで義姉さんは欲求不満になり、俺はそれに付け入って関係を持つようになった。最低だろ?」

「えっと、それは……」


“最低”と言ってしまうのは簡単だし、実際のところ初めはそう思った。でも、そう言いたくないと思った。それはなぜかと言えば……

そう。阿部和馬だからだ。この人が、単純に快楽に溺れるような男とは思えないからだ。正直に言えば、思いたくない、だけれども……

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