素敵な勘違い 〜負け組同士のラブバトル〜
「待って」


私は、そんな阿部和馬の腕を持った。


「ん?」

「驚きはしたけど、そんなに引いてない」

「そうなのか?」

「うん。それより、どうして私に話してくれたのか、その訳が聞きたいの」


そう。阿部和馬と裕子さんの関係は、決して他人に話したいようなものではないと思う。と言うより、むしろ隠したいはずだわ。それなのに、私に話してくれたのはなぜなのか。

彼はさっき、“プロセスを大事にしたい”と言ったと思う。つまり過程を大事にしたいと。それが彼と私のこれからについてだとしたら、私に異存なんかあるわけない。だって私は、いつの間にか阿部和馬の事を……


「お前って、時々鋭いのな?」

「“時々”じゃないと思うけど?」

「そうか? あはは、それは失礼」


阿部和馬は、白い歯を見せ爽やかに笑った。私、彼のこの笑顔がかなり好きかも……
なんて、今は見惚れてる場合じゃないわね。


「早く話して」

と催促したものの、

「え? あ、ああ……」


阿部和馬は素敵な笑顔を引っ込め、代わりに困ったような顔をして頭に手をやった。

< 69 / 83 >

この作品をシェア

pagetop