素敵な勘違い 〜負け組同士のラブバトル〜
「早く?」

「う、うん……わかった。言うけど、笑うとか呆れるとか、そういうのはナシにしてくれるか?」

「そういう類(たぐい)の話なの?」

「たぶんな」


なんだ、私の勘違いだったのかなあ。私はてっきり……


「わかったから、言って?」

「おお。えっとさ、俺は義理の姉と関係を持つようなダメな男だし、イケメンとはほど遠い容姿だし、それは十分過ぎるほど自覚してるし、お前に相手にされないのは解ってるんだけど……」


阿部和馬は、彼らしくもなく言いにくそうにそこまで言い、頭をポリポリとやり出した。

煮え切らない彼の態度にイラッとしつつも、私は次第に胸がドキドキしてきた。だって、この流れは、私が期待した通りなんだもん。


「俺さ、いつの間にかお前を、す……」

「嬉しい!」


私は、おもいっきり阿部和馬に抱きついた。阿部和馬は“す”しか言ってないけど。もしかしたらフライングかもしれないけど、待ちきれなかったんだもん。


「ちょ、真琴……?」

「私も好きよ。阿部和馬……」

「う、嘘だろ? もしかして、からかってるのか?」


私は阿部和馬の腕の中で、頭を何度も横に振った。


「マジなのか? 本当に?」


今度はコクコクと頷くと、


「すげえ嬉しい!」


と阿部和馬は言い、私をギューっと抱きしめた。ちょっと痛いくらいに、力を込めて。

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