素敵な勘違い 〜負け組同士のラブバトル〜
人々からかなり離れた所まで行き、和馬はようやく歩みを止めた。そして私を向くと、ガバッて感じで抱き着いてきた。
あまりに急な事で私はびっくりしたけども、相手は愛しい彼氏なわけで、もちろん私は彼を拒む事なく、彼の広い背中にそっと手を回した。
すると、和馬の肩の辺りが小刻みに震えている事に気がついた。もしかして、泣いている?
たぶん和馬は、司法試験にまた落ちた事で落ち込んでいるのだと思う。ということは、いよいよ私の出番だわね。彼を慰めてあげなくちゃ……
「そんなに落ち込まないで? また来年頑張ればいいじゃない。ね?」
私は彼の背中を優しく摩りながら、今まで出した事もないぐらいの優しい声音でそう言った、のだけども……
「来年なんてない。司法試験は3回しか受けられないんだ」
ガーン……
し、知らなかった。司法試験には、そんな厳しい“掟”があったなんて……
「そ、それはきっとこういう事よ。つまり、和馬は検事になる運命じゃなかったって事。そう。和馬にはもっと相応しい職業があるのよ。“天職”って言うの? うん、きっとそう」
「例えば?」
「え? ん……そうねえ、和馬は頭がいいんだから、公認会計士なんてどう?」
私は乏しい知識の中で、司法試験に匹敵する程の難関な資格を言ってみた。
「今から大学に入り直して、経済を勉強しろってか?」
「へ? ああ、それは困るわね。じゃあ……一級建築士は?」
「それも同じだっつうの」
「そ、そうなの? じゃあ……」
大学に入り直さなくてよくて、それでいて和馬のオツムを活かせる職業もしくは資格ってないかしら……
なんてことを必死で考えていたら、
「お前って面白いな。大好きだよ」
って言われた。“好き”って言われたのはあの日以来だし、今回は“大”が付いててなおさら嬉しいのだけど、今はそれどころじゃないわね。
「誰も落ちたとは言ってないだろ?」
「…………へ?」
あまりに急な事で私はびっくりしたけども、相手は愛しい彼氏なわけで、もちろん私は彼を拒む事なく、彼の広い背中にそっと手を回した。
すると、和馬の肩の辺りが小刻みに震えている事に気がついた。もしかして、泣いている?
たぶん和馬は、司法試験にまた落ちた事で落ち込んでいるのだと思う。ということは、いよいよ私の出番だわね。彼を慰めてあげなくちゃ……
「そんなに落ち込まないで? また来年頑張ればいいじゃない。ね?」
私は彼の背中を優しく摩りながら、今まで出した事もないぐらいの優しい声音でそう言った、のだけども……
「来年なんてない。司法試験は3回しか受けられないんだ」
ガーン……
し、知らなかった。司法試験には、そんな厳しい“掟”があったなんて……
「そ、それはきっとこういう事よ。つまり、和馬は検事になる運命じゃなかったって事。そう。和馬にはもっと相応しい職業があるのよ。“天職”って言うの? うん、きっとそう」
「例えば?」
「え? ん……そうねえ、和馬は頭がいいんだから、公認会計士なんてどう?」
私は乏しい知識の中で、司法試験に匹敵する程の難関な資格を言ってみた。
「今から大学に入り直して、経済を勉強しろってか?」
「へ? ああ、それは困るわね。じゃあ……一級建築士は?」
「それも同じだっつうの」
「そ、そうなの? じゃあ……」
大学に入り直さなくてよくて、それでいて和馬のオツムを活かせる職業もしくは資格ってないかしら……
なんてことを必死で考えていたら、
「お前って面白いな。大好きだよ」
って言われた。“好き”って言われたのはあの日以来だし、今回は“大”が付いててなおさら嬉しいのだけど、今はそれどころじゃないわね。
「誰も落ちたとは言ってないだろ?」
「…………へ?」