素敵な勘違い 〜負け組同士のラブバトル〜
和馬は、キョトンとした私の肩を押し戻し、それでようやく私は彼の顔を見たのだけど、その顔は想像してたような泣き顔ではなく、今まで見たこともないような、満面の笑顔だった。


「まさか……受かったの?」

「“まさか”は酷いなあ」

「奇跡だわ」

「それも酷いなあ。俺は予感してたんだぞ?」

「そうなの?」

「ああ。今回は今までより手応えがあったから」

「和馬……おめでとう!」


今度は私から和馬に抱き着いた。まさか和馬が司法試験に受かるなんて、思ってもみなかった。和馬には本当に失礼なことだけど。


「ありがとな」

「どうしてすぐに言ってくれなかったの?」

「それはさ、あそこでこういう事はしたくなかったんだ。周りに悪いだろ? 特に落ちた人にさ」


ああ、そうか。だから和馬は急いで離れたところまで来て、私にハグしたのね。いかにも和馬らしい、優しい気遣いだなあ。大好き!


「真琴、お前もおめでとう」

「えっ?」

「誕生日」

「憶えててくれてたの?」

「当たり前だろ?」

「ありがとう。おめでたくはないけどね」

「あはは。そう言うなって。それと……」


和馬は私から少し離れ、ズボンのポケットに手を入れて何かを取り出した。

< 76 / 83 >

この作品をシェア

pagetop