素敵な勘違い 〜負け組同士のラブバトル〜
「後でと思ってたけど、待ちきれないんで今渡したい。受け取ってくれるか?」


そう言って和馬が私に差し出したのは、小さな濃紺の小箱だった。よく指輪なんかが入ってるやつだ。


「私に?」

「もちろん」

「開けていい?」

「どうぞ」


小箱を受け取り、パカッて感じで蓋を開けると、中にはやはり指輪が入っていた。細いシルバーのアームに、小さな青紫色の石がちょこんと乗ってある。


「うわあ、可愛い……。もしかしてこの石、サファイア?」


サファイアは9月の誕生石だ。


「小さいけど、一応な。ちなみにアームはプラチナだ」

「えっ、そうなの? 高かったんじゃない?」

「そうでもないが、アルバイターにはちょっとキツかったかな」

「もう……そんな無理する事ないのに……」

「嵌めてみてくれよ?」

「うん、そうだね」


私は指輪を箱から取り出し、右か左かで少し迷ったけど、左手の薬指に嵌めてみた。


「うわあ、ピッタリだ」

「よかった。お前が寝てる間に測ったんだけど、ちょっと不安だった」

「そうなの? 油断も隙もないわね……」

「あはは。で、受け取ってくれるか?」

「もちろんよ。ありが……きゃっ」


“ありがとう”を言う間もなく、私は和馬にギュッと抱きしめられてしまった。

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