素敵な勘違い 〜負け組同士のラブバトル〜
「よかった……」

「ちょっと、和馬ったら……」


私はすぐに和馬の肩の辺りを押し返した。周囲に人がいるのに、これはちょっと恥ずかしい。さっきのハグは、試験に受かった嬉しさからで仕方なかったと思うけど、今度のはね……

私が誕生日のプレゼントを受け取ったぐらいで、大げさ過ぎるでしょ?


「なんだよ?」

「“なんだよ”じゃないでしょ? 公衆の面前で……。恥ずかしいからやめて」

「そんなの構うもんか。人生の一大事なんだから」

「はあ? そんな、大げさな……」

「大げさって、お前は結婚を軽く見てんのか?」

「け、結婚!?」


和馬の口から思わぬ言葉が飛び出し、私はつい大きな声を出してしまった。


「な、なんで“結婚”が出て来るのよ?」

「お前なあ……。その指輪の意味、解ってねえの?」

「へ? これは誕生日のプレゼントでしょ?」


と答えたら、和馬はハアーと盛大なため息をつき、ガックリと項垂れた。


「え? 違うの? ねえってば……」


私が項垂れた和馬の肩を揺さぶったら、彼はようやく顔を上げ、苦笑いを浮かべながらこう言った。


「婚約指輪に決まってんだろ?」

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