素敵な勘違い 〜負け組同士のラブバトル〜
「えっ?」

「待つのはイヤ」

「真琴……?」


和馬は途端に悲しそうな顔をした。私に断られたと思ったのだろう。

もちろん、私はそんなつもりで言ったのではないし、意地悪で言ったのでもない。でも、おかげで和馬の本気さを知る事が出来た気がして、私はとても嬉しかった。


「私……すぐに結婚したい」

「えっ?」

「式とか披露宴とか、そういうのは後回しでいいし、しなくても構わない。それよりも、早く和馬のお嫁さんになって、一緒に暮らしたい」

「で、でも、俺には稼ぎが……」

「私が働くからいいじゃない? 和馬一人ぐらい、私が養ってあげる」

「真琴!」


私は再び和馬の腕の中にすっぽり抱きかかえられてしまった。公衆の面前で、何をやってるのかしらね。


「しばらく甘えていいのか?」

「うん、もちろんよ」

「ありがとう。じゃあ、そうさせてもらうよ」

「うん。でも、和馬……」

「ん?」

「何だかさ、私からプロポーズしたみたいになってない?」

「そうか?」

「そうよ。ちゃんと言われたいな。和馬から……」

「わかった」


和馬はいったん私を離し、真剣な眼差しを私に向けた。私も彼を真っ直ぐに見て、じっと彼の言葉を待った。たぶん私の生涯で、聞くのはこれが最初で最後になるであろう、あの言葉を……


「真琴、俺と結婚してくれるか?」

「はい、喜んで……」


私は、和馬の首に両手を回し、背伸びをして彼に口付けた。人目なんか気にせずに。

不思議と涙が止めどなく溢れ出し、涙は嬉しい時も出るものだって、この時初めて知ったのだった。


おしまい。


※最後までのお付き合い、誠にありがとうございました。

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