素敵な勘違い 〜負け組同士のラブバトル〜
それからいったいどのくらい寝たのだろう。ふと目覚めた私は、すっかりいつもの調子に戻っていた。


部屋には煌々と明かりが灯り、壁に掛けられたシンプルなアナログの時計を見ると、すっかり夜も更けた時刻だった。


阿部和馬はと言うと、ライティングデスクに向かって腰掛け、パソコンを操作しているようだった。その後ろ姿に向かって近付き、


「ごめんなさい。すっかり寝過ごしちゃって……」


と言うと、ようやく彼は私に気付き、振り向いた。


「おお、起きたか。気分はどう?」

「おかげさまですっかり……」

「そうか。それはよかった」

「それ、小説?」


パソコンの画面には文字、しかも漢字が多い、がびっしりと並んでいて、小説を読んでいるのかなと私は思った。だとしたら、ちょっと意外なのだけど。


「いや、違う。判例だよ」

「ハンレイ?」


阿部和馬から、聞き慣れない言葉が返ってきた。

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