【短】50-50 フィフティ・フィフティ
「俺も今日は、仕事が休みなんだ。
それで、映画でも観ようと思ったんだけど。
いい天気だし、良かったら、ドライブにでも行かないか?このすぐ近くに車、停めてるんだ」
こんな田舎でナンパされちゃうなんて。
びっくりしたけど、お髭さんは、いい人そうだ。
好みじゃないけど、シブいし、話も楽しそう。
「ありがとう、せっかくの休みの日に、俺に付き合ってくれて」
ハンドルを右に切りながら、お髭さんは柔和な笑顔を見せた。
「んー、いいですよお、お礼いうのは、私の方ですね。
ありがとうございました」
助手席で私は、ぴょこんと頭を下げた。
「さっきはマジでヤバイって思いましたもん。
看護師、映画館で刺殺って、Yahooニュースの見出しが頭に浮かびました」
「はは。暑くなってきたから、アタマのおかしいやつが出てくるんだよな…」
お髭さんの古いセダンの助手席から、故郷の山や田んぼ、川を眺める。
やっぱ、お髭さんはいい人で。
車に乗る前、喫茶&BAR「ロミオ」オーナー松本勇太、と記された名刺をくれた。
年を訊いたら、アラフォーだよ、という答えが返ってきた。