【短】50-50 フィフティ・フィフティ
小田桜(おだ さくら)です、看護師です、と私は簡単に自己紹介した。
「風邪引いた同僚の夜勤、引き受けたりして、このところ、睡眠不足が続いていたのものだから。
暗くなった途端、ついつい寝てしまって」
「看護師なんて、大変な仕事だもんな…」
「んー…仕事も大変だけど…プライベートでもいろいろあって。
私、何もかもイヤになっちゃった。
それで里帰りしたの…」
「何?何があったの?」
松本さんは、丸顔でちょっと熊っぽい。そんな彼が目を丸くして訊く。
「んー、彼氏に浮気されちゃったんです。
3年前から付き合ってる人で、彼も同じ職場の看護師なんです。
イケメン君でちょっとチャラいとこあるんで、何度かそういうのあったんですけど、今回はちょっと酷くて…」
「どんな風に酷いの?」
「んー、彼のアパートに行ったら、女の子がいたんです…」
ぐじゃぐじゃした話題なのに。
開け放した車の窓から窓へ、爽やかな初夏の風が吹き抜ける。
「あらま。そりゃ大変だ」
「服は着たけどね…私が、合鍵で部屋に入ったら、彼はシャワー中で。
タオル腰に巻きつけて、遊びに来てただけだって必死に言い訳したけど、夜11時だよ?」