変愛
烏龍茶を飲み干してから、私は口を開いた。

「煙草吸うなら、
私に聞いてから吸って欲しかった…。」

自分でも思ったより低い声が出た。
無言で、中川家が煙草の火を消した。
煙草の事なんて
別にどうでも良かったが、どうにかしてこの場の空気を変えたかった。

さっきより空気が重い。
中川家が苦虫を噛み潰したみたいな顔で
、消した後のタバコの紫煙を見ていた。私は空になった
グラスの氷に目を移した。
沈黙が続いた…。
溶けかけの氷がグラスに当たって
カランッ
と音が鳴った。

「俺ら
小さい時から
友達で、仲良くてさ…
もこみちは、格好良くてモテるんだけど選り好み激しいって言うか、なんか俺に気を使ってか、
なかなか彼女作らなくて…
アイツが珍しく
嫌って言わなかったの、…ちゃんだけだったし、もこみち
良い奴だから…
よろしく頼むよ。」

えっ?!

中川家の言葉に私はパニクった。
先程の空気と会話と今の発言が噛み合わないからだ。
意味が判らない!?

私はとまどいながら返事を考えた。
私が返事をする前に中川家が再び口を開いた。

「煙草吸って、ゴメン…もこみちの…
大事な…
なのに…」

答えを考えるのに夢中で、中川家の言葉を聞き逃してしまった。

今…なんて言った?!

私の返事を待っている中川家にもう一度聞き返す事は出来なかった…。
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