変愛
もこみちのそんな姿を見ると私は
いたたまれなくなり男気スイッチが入っった。
「そんなん言ったら小学生の私は…男の子相手に取っ組み合いのケンカしてたよ!
それにスカートめくりしてた男子には、ズボン下ろしで報復したら
全部が下りて…
その男の子を泣かした事があるよ!」

私の話にもこみちが笑った。
笑わすつもりではなかったが、もこみちの気持ちをなんとか上向きにさせようと
したので、もこみちが笑ってくれた事で私は安心した。
「帰ろうか…」

私は座り込んだままの、もこみちに手を差し出した。
もこみちが顔を上げ、潤んだ瞳で私を見ていた。
通り抜けた車のライトが差し込み、もこみちの顔に憂いをおびさせ、その時の、もこみちは、女の私が負けそうな色気を醸し出していた。
私は不意に目眩を覚えた…。
目眩の中、
歪んだ中川家の残存が見えた。
もこみちが囁いた。

「今度、俺の家に遊びに来ない…?」

甘い囁きと、歪んだ虚像が私を包み込む…。

みずから苦しむか、
もしくは他人を苦しませるか、
そのいずれかなしには
恋愛というものは存在しない…。
レニエの言葉が頭を横切った…。
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