Secret Lovers
「で、好きな人っていうのは誰?まだ入学して一ヶ月しか経ってないのに。同じクラス?」
「違うよぉ!ほら、聞いてなかった!」
再び頬を膨らまし、そっぽを向く優子。
その頬を指でつつくと、ぷぅっと息が抜けていき、彼女が本当に怒っているわけじゃないことが分かる。
「ごめんごめん!で、誰?」
「凛も名前くらい聞いたことあると思うよ!ほら、演劇部の王子様!」
「あー、知ってる。この前めちゃくちゃ囲まれてたの見たよ」
部活紹介という行事があったのだが、その際も彼が登場しただけで、体育館内は大興奮だった。
一年生が多い催し物のはずなのだけど、一ヶ月足らずでその評判が広まるというのは、やはり、人気者という事実の何よりの証なのだろう。
「そうそう、学園一のイケメンで、演技力抜群で、みんなの人気者!2年の周防奏多(すおう かなた)先輩!一目惚れしちゃったんだぁ!」
恋する乙女の優子は頬を少し染め、空を見上げていた。
恋をすると、女の子は可愛くなると聞くけれど、確かに優子はいつもより一段と可愛らしく見えた。