カノジョノカケラ

「あ…何でもない。」
「何でもないわけないじゃん、その雰囲気。」

東大に落ちたというのに、高端は割と元気そうだった。

「今日は全然飛鳥ちゃんと喋ってないみたいだけど、何かあった？」
「…冷やかしてんのか？」
「違うって！…その、心配だから…。」

高端の顔が少し赤くなる。と同時に、目線をそらした。

「心配？」
「あ…飛鳥ちゃんの方だって。その、何かあったのかなって…。」
「…優しいんだな。」
「え？」
「いや…自分だって落ちて相当へこんでるはずなのに、人のこと心配して…。」
「…優しいから、ってわけじゃないよ。私はただ、どうにかしてあげたくて…。」
「…それを優しいって言うんだって。」
「…そういうもんなの？」
「そういうもんだって。」
「そう…かな。」
「澄鈴～。」

誰かが高端を呼ぶと、高端はそっちに向かった。

…今の会話は、とても自然な流れでできた。緊張するということもなく、ラフすぎるということもなく。

これが飛鳥の前だと、どうもうまくいかない。

つい緊張してしまって、なかなか思うように話せない。飛鳥の方も、そうなんだろうか？

だが、それを確かめる勇気も術もない。

一体、僕達はどうしてしまったんだろう？

それが、知りたい。

…よし、やっぱり、飛鳥と話してみよう。ひょっとしたら僕の杞憂だったりするかもしれないし、そうじゃなくても、飛鳥に少し近づけるはず。