カノジョノカケラ
「とりあえず宿題でもするか…。」

そう思ってノートを開いてみたものの、どうにもやる気が起きない。

「本でも読むか…。」

本を開いてみたものの、どうにも読む気になれない。

「ネットでもするか…。」

ネットを開いてみたものの…以下同文。

やる気が起きない。飛鳥のことが気になっている、ということか。

「ふぅ…。」

気がつけば、僕はキッチンのすぐ傍に来ていた。このドアを開ければ、飛鳥が何をしているかは見える。

ここに来るのにも、だいぶ時間がかかってしまった。何度も思いとどまり、何度もそれを払いのける。その繰り返しをしている間に、だいぶ時間がかかってしまった。

「お、お邪魔しま~す…。」

心の中で呟き、僕はソロリとドアを開けた。隙間から見える飛鳥は、エプロン姿で冷蔵庫の中を何やら触っている。

「…。」

僕は思った。これ、何かストーカーみたいだな…。

「ん…?」

ふと、飛鳥が振り向いて僕のいるドアの方を見る。ヤバい、気づかれたか!?

「気のせいか…。」

飛鳥は再び冷蔵庫の方を向いた。僕はこれ以上見ているのがちょっと怖くなってしまい、大人しくもとの場所に戻ることにした。
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