カノジョノカケラ
特にこれといったこともないまま、放課後となった。

幸せそうな顔で帰る者もいれば、まるで世界が終わったかのような顔をしてとぼとぼと歩く者もいる。

「太陽さん。」

飛鳥に呼ばれる。

「ん?」
「ちょっと…屋上に、来ていただけますか?」
「あ、うん。」

屋上に上がる。雲さえもあかね色に染まる夕焼け空は、ため息が出るほどキレイだった。

「あの…。」

僕の方を向いて、飛鳥が何かを差し出しながら言う。

「これ…受け取って下さい。」
「ん…?」

飛鳥は、ラッピングされた小さめの箱を持っていた。

「…開けていい?」
「いいですよ。」

箱のリボンをほどき、ラッピングをはがす。そして、箱を開けた。その瞬間目に飛び込んできたのは、僕が見たことのある、だが、少し僕が見たのとは違うものだった。

「これって…。」

飛鳥の頬が赤くなる。

飛鳥が僕に渡したのは…飛鳥が昨日作っていた、チョコだった。しかも、昨日のチョコにプラスされて、メッセージカードのようなものもあった。

「…そのカードは、私が見てない時に読んで下さい。じゃあ、私はこれで…。」

恥ずかしがっているのか。やっぱり、飛鳥はどこか葉月と似ている。

…ここで終わるなら、僕はこんなことをここで話したりはしない。

今の一連の流れを、見ていた人物がいたのだった。

「カタン!」

何かの音がした。音のする方を見ると、そこには…。
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