カノジョノカケラ
衝撃的すぎて、質問を返すのがやっとだった。

飛鳥が、人間じゃない?

丹隼さんは変人だけど、嘘をつくような人じゃない。

僕だって、飛鳥のことを不思議に思ったことはあった。記憶を失っていたのもそうだし、飛鳥が天使になった幻覚を僕は見たし、肝心なところを話そうとしないし、ところどころ葉月に似ているところがあるし。

でも、人間じゃないなんて考えたこともなかった。

飛鳥のことを大切に思う気持ちに、穴が開いたような気がした。

僕は、人間じゃないのを大切に思っていたのか?今までの思い出は、全部勘違いでラッピングされていたというのか?

「あの…。」
「ん?」
「丹隼さんは、飛鳥は何だと思っているんですか?その…研究者の、立場として。」

飛鳥が人間じゃないんだったら、飛鳥の正体を知りたい。いや、知っておくべきなんだ。高端を切り捨ててまでも選んだ、大切な存在のことだから。

「…こういう関係の本を色々買って読んでみた結果から言えることだけど…飛鳥ちゃんは、幽霊とか天使とか、そういう部類の存在だと思うんだ。」
「幽霊とか…天使?」
「まだ決まったわけじゃないし、そもそもそういうのがいるかどうかも分かんないんだけど、今のところは、その可能性が一番高いってこと。」

飛鳥は…幽霊?天使?それとも別の何か?

僕はそのすべてを否定したかった。ちゃんと、飛鳥は普通の人間なんだ。そう思いたい。

「もし飛鳥が幽霊だとしたら…誰の幽霊だと思いますか?」
「そこまでは分かんないよ。」

空気が重い。こんな話をされたところで、僕は頭の片隅に追いやっておくしか、僕の正常を保つ方法が無かった。こんなことを考え続けてたら、どうかしてしまう。

「…さ、今の話は忘れよう。僕が言いだしたことだけど、あんまり気にしなくていいから。」

…そんなことを言われるとますます気になってしまうのが、人間っていう生き物だ。僕の頭に、得体の知れない何かがへばりついた。
< 131 / 142 >

この作品をシェア

pagetop