カノジョノカケラ
「…まずは、高校生活お疲れさまでした。三年間、皆は本当によく頑張ったと思います。

これから、皆はそれぞれ、全く違う道を歩んでいくことになると思います。大学に行く人もいれば、就職する人もいるし、また一年間頑張って、浪人する人もいると思います。

でも、一つだけ、どの道を歩んでいく人にも共通して言えることがあります。それは、『生きている』ということです。

何をしていても、結局は皆生きているんです。

…別に亡くなった人の分まで生きろとは言いませんけど、それでも、ちゃんと一人分の人生を生きていて欲しいと思います。

そのためにも、過去は振り返らないで下さい。今まで出来ていなかった分を取り戻そうと思っている人もいるかもしれませんが、いくら取り戻そうと思っても、百パーセント取り戻すなんて不可能です。だから、後ろだけは、見ないでください。前を向いて、生きて下さい。

…最後に、皆に感謝の気持ちを伝えたいと思います。

このクラスの担任となったこの一年間、本当に充実していました。人生の何十分の一に過ぎない時間でしたが、密度はかなりのものだったと思っています。

そんな日々をくれた皆に、本当に感謝しています。

ありがとう。」

最後の五文字が、適度な重みをもって、僕の体全体に響いた。

何だかんだありながらも、結局は、人は人に感謝して生きている。

「パチパチパチ…。」

誰かの拍手が聞こえる。それはすぐさま広がり、教室全体を包み込んだ。僕も、手が赤くなるほど手を叩いた。

こうして、僕の高校生活最後の日が終わった。でも、人生の終わりじゃない。飛鳥もそれを分かっているだろう。だから、会える時間は少なくなるけど、またいつもと変わらない人生を送ることができるだろう。

そう、思っていた。
< 134 / 142 >

この作品をシェア

pagetop