カノジョノカケラ
「…。」

帰り道、僕は終始無言だった。

飛鳥の言葉が気になりすぎていた。「話してもいい時期」。つまり、いずれは話しておかなければならないことだったのだろうか。

飛鳥が秘密にしていたこと。それは一体何なのか、少しでも早く、明らかにしたかった。

…あるいは、何らかのきっかけがあったのだろうか。飛鳥が秘密を打ち明ける、何か重要なきっかけ。

僕の今までの経験をリサーチしてみたけれど、特にきっかけになりそうなものは見つからなかった。

話はしなかったけど、手だけは繋がっていた。それが、今の僕の居場所を示しているような、そんな気がしていた。もし今飛鳥と手を繋いでいなかったら、僕は一人。一人、取り残されたような感覚を味わっていただろう。

家に着いても、僕は何も言わなかった。

「…で、話って?」

僕がやっと口を開いたのは、部屋に入ってからだった。

「…本当は、言いたくなかったことなんですけど…もう太陽さん達も気づいているようですし、言いますね。」
「僕『達』…?」

飛鳥が下を向く。

「…太陽さんと、丹隼さんです。」
「丹隼さん…?」
「はい…。」

その瞬間、僕の思考回路の一部が繋がった。

飛鳥が話をするのは…飛鳥が、人間じゃないかもしれないという、あの話についてだ。飛鳥は、あれをどこかで聞いていたんだ。
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