カノジョノカケラ
「…この前丹隼さんの家に行った時、太陽さんと丹隼さんで、話をしてましたよね。」
「…聞こえてたのか…?」
「いえ、聞いてました。丹隼さんの家に散らばっていた本が、丹隼さんが読まなさそうなオカルトな本ばかりだったので…。」

背中、というより全身を、冷たい何かが通り抜けて行く。

「…僕は別に、飛鳥のことを疑ってはないけど、でも丹隼さんに言われたら、何か納得しちゃって…。」
「別にいいですよ、太陽さんがどう思ったとしても、私は私、一つですから。

それで、あの話の内容なんですけど…あれ、本当…なんです。」
「…えっ…?」

飛鳥が…人間じゃない。

本人の口からこぼれた、衝撃的な言葉。僕は焦りと不安と疑いと、その他のよく分からない感情達が入り混じった変な気分だった。

「ちょっ…え、人間じゃないって…あの内容か?いや、まさかそんなこ…。」
「それなんです。」

僕の言葉を遮った飛鳥の声は、覚悟を決めた者の声だった。

「…飛鳥、まさか…。」
「…はい。私は…人間じゃないんです。」

僕は飛鳥の肩を掴み、飛鳥を揺さぶった。信じられないという思いが、僕を突き動かし、暴走させた。

「嘘だよな!?違うんだよな!?これ、何かのドッキリとかそんなんなんだよな!?そうだよな!?」
「…本当なんです…。」

飛鳥はなおもうつむいたままだった。

「…じゃあ、飛鳥は一体何なんだよ!?飛鳥は何者なんだよ!?どう考えたって飛鳥は人間だろ!?」
「人間じゃないんです!」

飛鳥の肩を揺さぶっている僕の体を、飛鳥の手が押しのけた。
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