カノジョノカケラ
「…私の正体、知っちゃったんだね…。」
「…葉月の方でも、問題があるのか?」
「ある。私…太陽を、こっちに連れてこないと…。」

葉月の言う「こっち」が一体どこなのか、僕には瞬時に想像がついた。それと同時に、僕は死期を悟った。

「…よく分かんないけど、そっちではそっちのルールがあるみたいだな…。」
「うん。私達天使はここに来ることができるんだけど、その時に私達の正体を知った人も、こっちに連れてこないといけないから…。」
「そうか…。」

何故か、恐怖は感じなかった。現実離れしすぎているからなのか、それとも、葉月が言っていることだからなのか。

「あと…もう一つ、言っておかないとね…。」
「もう一つ?」
「うん。蒼衣ちゃんを殺したのは…私だってこと。」
「え…?」

でも、そこまで驚きはしなかった。葉月の正体に比べれば、かすんで見えてしまっていた。

「…何でだよ…。」
「…。」

葉月は黙ったままだった。

「何でなんだよ!」

蒼衣ちゃんを殺した犯人は、僕の好きな人。だからこそ、許せなかった。

「蒼衣ちゃんが太陽に告白した時の一言が、許せなくて…。

蒼衣ちゃん、『恋敵がいなくなった時に』って言ってたでしょ?私、知ってるの。

蒼衣ちゃんは、私がいなくなった、私は消えたって思ってる…。それが、許せなくて…。

だから、私はトイレに行くふりをして、映画研究部の部室に行ったの。そこには蒼衣ちゃんがいて…。
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