カノジョノカケラ
名前を呼んだら、蒼衣ちゃん、驚いてた。そりゃ、私がいるはずないもんね。その時は飛鳥の方だったけど、私、蒼衣ちゃんと話をしているうちに、本気になっちゃって…。

蒼衣ちゃんに、正体がばれたの。

今でも、何でばれちゃったんだろうって不思議に思ってるし、後悔もしてる。だけど…私がいなくなったって言う風に言われて、許せなかったの…!私はちゃんといるのに、天使っていう存在を信じてないだけで、私がいないって言われるのが嫌で、嫌で…!

正体がばれた時、ここぞとばかりに私は蒼衣ちゃんを殺そうとしたの。天使って、あくまでも本体は死体なの。だから、指先は冷たくて。そこから空気の流れを作れば、ピンポイントで凍らせるなんて簡単なの。

凍らせたら、蒼衣ちゃんは倒れて、ピクリとも動かなかった。

怖かったけど、それでいいんだって思えたの。

…太陽は許さないって、分かってた。だから、隠し通すしかなかったの。でも、隠し通せないって思って…。

天使がここで死んだら、私達の世界に戻ることができるの。だから、手首を切って、死のうとした…。

でも太陽は優しいから、助けてくれたんだよね。そればかりか、私を切ったっていう風に疑われまでして…。

結局戻れなかったから、いっそこのまま、近藤飛鳥として生きていてもいいんじゃないかって思ったの。だけど、太陽に隠しごとをしている自分が許せなくて…。

こんなことを言っても受け入れてくれるわけないって分かってるけど、蒼衣ちゃんを殺しちゃったこと…許してくれる…?」

僕は歯を食いしばった。抑えないと。怒りを抑えないと。

許されることじゃないけど、葉月だったんだ。

葉月は、僕のためにあんなことまでしてくれたんだ。僕がここで許してあげないと、葉月がここまでしてくれた意味がなくなってしまう。
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