カノジョノカケラ
「…え?」

一瞬、耳を疑った。

僕が誰かに告白したことはあったが、逆は初めてだったからだ。

「文芸部に入部した時から、ずっと好きだったんです…。でも、なかなか言えなくて…。

そんな時、先輩が河野先輩と付き合ってるっていうのを知って…。私、ショックで文芸部を辞めました…。でも、その河野先輩がいなくなったって知って、もう一回言おうと思ったんです。

…って、私どうかしてますよね。恋敵がいなくなったところで、もう一回挑戦するなんて…。すいません、今言ったこと忘れて下さい。先輩が私のこと好きなわけないですよね…。」
「あ、ちょっと…。」

僕は引き止めたが、蒼衣ちゃんは走って階段を下りて行った。何故か悪いことをしてしまったような気がしていた…。

「あ、帰って来た…。」

戻ると、質問攻めが待っていた。

「用事何だったの?」
「まさかの告白とか…?」
「それはないんじゃないの?」
「…あり得る。」
「落ち着けって、四人とも。」

四人の予測は大当たりなのだが、そんなこと、口が裂けても言えない。最近の情報網は、少し張り巡らされすぎている。
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