カノジョノカケラ
「はぁ…。」

帰り道。僕のため息が、冬の夜空に溶けていく。そして寒さとなって、僕の体に返ってくる。

「ため息多いですよ、太陽さん?」

心配そうに飛鳥が話しかけてくる。

「…僕のせいで、文化祭がなくなったんだ…。」
「太陽さんのせいじゃないですって。」
「僕が行かなかったら、蒼衣ちゃんは殺されずに済んだかもしれないんだ!」

まだ残っていた自責の念が、こんなところで爆発してしまった。言ったあとで、強く言ってしまったかもしれないと後悔したが遅かった。

「そうやって自分のせいにして…それじゃ身が持ちませんよ!?」

飛鳥の体は震えていた。

「そうやってどんどん辛くなっていくのを…私、見てられないです。だから私、言ったんですけど…無駄だったみたいですね!」

飛鳥はきっぱりと言うと、走って行ってしまった。

「待てって、飛鳥!」

後ろから呼んでも、飛鳥は振り向かなかった。

…僕は、飛鳥を怒らせてしまったのだ…。
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