カノジョノカケラ
無性に腹が立ったが、僕はそれと同時に優越感のようなものも感じていた。証拠なんて見つかるはずがない、という、上から目線に似た気持ちだ。

「そうだ、病院…。」

真夜中だったが、僕は病院へと走り出した。

夜風が、僕の冷え切った体をさらに凍てつかせる。でもそんなのを気にしている余裕はなかった。

先に病院に行っている丹隼さんから連絡がないのだが、逆にそれが怖かった。不安だ。もしかしたら、と考えると、さらにさらに寒くなる。

「待っててくれ、飛鳥…!」

病院に着く頃には、僕の息は激しく荒れていた。

「あの…。」

夜間受付の人を見つけ、荒れた息が交じる声で尋ねる。

「近藤飛鳥の部屋って…どこですか…?」
「あ…!」

受付の人の表情が一変する。

「501号室です。五階に上がったらすぐです。すぐに行って下さい!」
「すぐに…?」

これほどまでになく冷たいものが、僕の背中を通り抜けた。

「近藤さん…出血がひどくて、もうすぐ亡くなるかもしれないんです!」
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