カノジョノカケラ
「飛鳥!」

僕は飛鳥がケガ人なのも忘れて、飛鳥に抱きついた。腕ごと巻き込んでいたので、今となって振り返れば「痛かっただろうな」と思ったりもする。

「よかった…!」

僕が抱いているのは、温かさだった。安らぎだった。心のよりどころとしている人だった。
ちゃんと生きている…。そう思うと、また涙が出てきた。…涙腺が緩いな、僕は。

「全く…こんなところでもラブラブなわけね…。」
「それが二人なんじゃない?」
「一番最後に来たのに、一番泣いてたのが安堂だからね…。」
「…納得…。」
「まぁまぁ、そう冷やかさないで見守ってあげようよ。」

皆の声も、今はただのBGMだった。僕はいくら抱いても足りない喜びだと知りながら、優しく、でも強く、飛鳥を抱きしめていた。いつの間にか、飛鳥の腕も僕を抱いていた。

「…今日はあんなこと言って、ごめんなさい…。」
「気にするなって。僕、もう呪いは解けたって思ってるから。」
「どういうことですか…?」
「だって今…飛鳥が生きてるから…!」

こみ上げてきた例のものは、飛鳥の肩を濡らしていた。

僕は何となくだが、飛鳥に好意に近い感情を抱いてしまっていた…。
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