カノジョノカケラ
「寒っ…。」

外を歩き、改めて寒さを実感する。ちゃんとコートなどを着てはいるものの、どうにも顔が無防備だ。風がダイレクトに顔に刺さる。それに雪も拍車をかけ、視覚すらも寒かった。

冬の朝とは、こうも冷え込んだものなのか…。

僕は今まで何とも思わなかったことを、ふと考えていた。

「私も寒いです…。」
「飛鳥はマフラーしてるからまだいいじゃん…。」
「そうじゃなくて、指先とかがすごく冷えて…。」

そう言いながら、飛鳥が手に息を吹きかける。その指先は赤く、寒さを物語っていた。

「冷え性?」
「そうなんですよね…。」

僕は飛鳥の手を握った。冷たさが僕の皮膚に伝染する。

「あ…。」

飛鳥の顔は、また少し赤くなっていた。それは寒さからなのか、それとも照れなのか。それは分からなかった。

「これでちょっとは、寒さも和らぐかな…なんて。」
「ありがとうございます、太陽さん…。」

飛鳥はマフラーで口元を隠した。それでも、顔が赤くなっているのは隠せていなかった。多分、僕も同じように顔が赤かったかもしれない。

…僕はまた少し、飛鳥のことを好きになっていた…。
< 48 / 142 >

この作品をシェア

pagetop