カノジョノカケラ
「もう皆来てるわよ。」
「マジか…。」

よくここで待っていられるよな…。

「ここですか…?」
「そう。」

毎年開けているはずなのに何故か開けにくさを感じてしまう扉を、俺はゆっくりと開いた。

「…来た…。」
「遅いよ、安堂。」
「あ、飛鳥ちゃん久しぶり~。」

入った瞬間に、俺は去年も一昨年も思っていたであろうことを思った。

この部屋…この人数で使うには、少々広すぎる。

「…あと三十分…。」
「年越しまで、か?」
「…そう…。」

今年も、残すところ三十分。やり残したことはないか、と自分自身に問いかける。

今年は、何かと激動の年だった。特にラストの一か月。

色んなことがありすぎて、気が付いたらもう最後の日になってしまっていた、という感じだ。
でも…もし僕が飛鳥と出会っていなかったら、と考えると、もっと今年は早く終わっていたと思わずにはいられなかった。

葉月の死というショックを原動力に通り過ぎようとしていた今年が、飛鳥のおかげで減速していた。

だから、今年やり残したことと言えば…飛鳥に、感謝の気持ちを伝えることだ。
< 53 / 142 >

この作品をシェア

pagetop