カノジョノカケラ
「…飛鳥。」

僕は飛鳥を部屋の外へ連れ出した。別に中で言ってもいい内容なのだが、個人的に恥ずかしい。

「その…ありがとな。」
「え?」
「いや、だからその…。」

言葉が続かない。そりゃそうだ。この流れ、一歩間違えれば変な意味にとられる可能性が極めて高い。

「どうかしたんですか?」

早く次の言葉を出さないと。探している暇なんてない。と言うより、もともと探すべきものでもない。浮かんできた言葉を、ありのままで体の外へ放出した。

「…僕にとって、今年っていう年は激動の年だったんだ。でも、僕はそのことから逃げてた。だから、実はかなり短く感じていたんだ。…だけど、飛鳥のことを思い出すたびに、理由は分かんないけど、一日一日を大切に生きようって思えたんだ。だから…僕と出会ってくれてありがとう、飛鳥。」

自分でも、何を言っているのか分からなかった。だが飛鳥は、思いがけない行動に出た。

「太陽さん。」

飛鳥は僕の名前を呼ぶと、僕を思いっきり抱きしめた。

「飛鳥…?」
< 54 / 142 >

この作品をシェア

pagetop