カノジョノカケラ
「ありがとうございます。私を…役立ててくれて。」
「何言ってるんだよ、飛鳥。傍にいるだけで、役に立ってる…と思うから。」
「ふふっ…。」

飛鳥は僕の右肩で微笑むと、僕を抱く力を少し強めた。

「私…好きなのかもしれません。太陽さんのこと。」
「えっ…?」

飛鳥の言葉に連動して、僕の肩が揺れていた。

「好きっていうのがどういうものなのかよく分からないんですけど…太陽さんのことは、好きだって堂々と言えるような気がするんです。」
「…。」

僕はどう受け止めたらいいのか、そしてどう返したらいいのか分からなかった。でも、何も言わなくていいような気もしていた。今こうして抱き合っているだけで、その気持ちの一部には応えられていると思った。

…そんな僕達を、こっそりと見ている人物がいたということを、この時の僕達には知る由もなかった…。

そして僕達は何も知らないまま、皆の所へ戻ったのだった。

「あと五分か…。」
「ねぇ、年明けの瞬間って何するの?」
「やっぱり何かして祝いたいよね…。」
「…どうする…?」

「じゃあ皆、こうしたら?」
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