カノジョノカケラ
その瞬間、僕達は床から踏切り、かなり低いながらも空にいた。

空…つまり、僕達は年明けの瞬間、地球にいなかった。

何でこんなつまらないことをやってるのかって?それはこれを僕達に言った張本人、御厨涼風に聞いてほしい。

それでも。

こんなつまらないことでも。

この年越しは、大事な思い出になったと思う。いや、思い出だ。断言できる。

ありがとう、去年。ようこそ、今年。

「えっと…明けましておめでとう。」

黙っているのが何となく照れ臭く感じられ、僕はとりあえず新年の挨拶をした。

「今年もよろしくお願いします。」

その後僕達は三十分ほどしゃべり、家に帰った。

「今日は初詣か…。」

これも文芸部員の定番行事。

「えっと…太陽さん達の初詣って、どんな感じなんですか?」

夜道を歩きながら、飛鳥が尋ねる。手を握っているからなのか分からないが、月と街灯に時折照らされる彼女の顔は心なしか赤く見えた。

「どんな感じって言われても…普通、としか言いようがないんだけどな…。」
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