カノジョノカケラ
駅に着くと、皆が待っていた。初詣に行くのは毎年のことなのだが、皆の顔は毎年心の高ぶりが激しくなっているのを映していた。

僕は帰ろうかと思った。

年越しを祝った時もそうだったが、僕達はこうして祝える立場ではないのではないか?

「飛鳥と蒼衣ちゃんの分まで」と言っておきながら、本当は海馬の奥の方に記憶をしまいこもうとしていただけなんじゃないか?

本当にこれでいいのか?こうしていていいのか?

僕は迷った。

迷った。

迷って迷って、決めた。

「皆。」
「ん?」
「初詣は…中止にしよう。」

待ってくれていた皆には悪いけど。

大事なものを忘れるのは、それよりもっと悪いことだと思うから。

そして何より、嫌だから。

僕は飛鳥の手を引き、皆の方を見ずに帰って行った。
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