カノジョノカケラ
足音が徐々に近くなる。僕はドアから離れ、ドアを観察した。

飛鳥が入ってきたら、僕は飛鳥に気持ちを伝える。

入ってこなかったら、思いはそっと心の中にしまっておく。

これで、優柔不断な僕でもちゃんとケジメをつけることができる。

足音がカウントダウンに聞こえてきた。

脈拍と呼吸を意識している僕がいた。

時間にするとわずかな時間なのだろうが、僕にはある意味永久よりも長い時間に感じられた。

足音が、止まった。

ゴクリと唾を飲む。果たして、ドアノブは回るのか。それとも、回らないのか。

回ったら、伝える。

回らないなら、そのまま。

回ったら、伝える。

回らないなら、そのまま。

回ったら…回らないなら…回ったら…回らないなら…。
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