カノジョノカケラ
「…太陽さん。」

ドアの向こうで、僕を呼ぶ声がした。

…まさかそう来るとは。

これじゃあ僕の「二択」の意味がなくなってしまう。

僕はどうしていいか分からず、何も言わずに待ってみた。

「いないんですか?」

そういうことにしておこう。

「変ですね…。」

もう一度、足音が聞こえた。小さくなっていく。…部屋から遠ざかっているようだ。

…でも、これでいいのか?

あれほど祈っていたのは、一体何のためだったんだ?

飛鳥に話を聞いてもらうんじゃないのか?

こんがらがった頭を一度整理すべく、僕は窓から空を見上げた。

色の比率は、白と青が半々。鳥が飛んでいる様子はなく、代わりに鳥の何倍も遅い速度で雲が流れていた。

それはまるで、僕の心がそのまま映されているようだった。
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