カノジョノカケラ
「どうしたんだ?」

飛鳥の方へ一歩近づこうとした時、飛鳥がつぶやいた。

「…来ないで…。」
「え…?」
「私…部屋にいたくない…。」
「どうしたんだよ、飛鳥?」
「…また同じことをやりそうで…怖いんです…。」
「同じこと…?」
「…でも、言えません…。」

こういう時にさらに問い詰めても、求めている答えなんて出ないのは分かっている。

だから…僕は別の方法で、答えを見つけようとした。

「…どういうことか分かんないけど、もし飛鳥に何かあったら、僕がいるから。」

言ってから、ベタすぎるセリフだと気づいた。

「…そんなこと言われると…太陽さんまで…。」

飛鳥が言い終わらないうちに、僕は飛鳥を抱きしめた。

残念ながら、感情表現の面ではそこまで器用じゃない面もあるらしく、こうする以外にすることが思い浮かばなかった。

「…。」
「だから、一緒に部屋に行こう。」
「…はい…。」

僕は飛鳥の涙が拭きとられてから、人数分のコップにお茶を入れ、トレイにコップを乗せると、部屋に向かった。
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