カノジョノカケラ
「あ、飛鳥ちゃん…。」
「どうしたの?」
「お茶入れてくれてたみたいなんだけど、トレイがどこにあるか分からなかったみたいでさ。長らく使ってなかったから…。」
「…安堂に聞いてない…。」
「お前は鬼かよ、高槻?」

そんなこんなで、勉強会が始まった。

文芸部と言えども、必ずしも文系というわけではない。高端と高槻は、理系に進むようだ。

「誰か、数学得意な人~?」
「あ、じゃあ私が…。」

よくこのメンバーで一緒にいたが、こんな風に勉強会を開いたのは初めてだった。これも、受験生ならでは、か。

…受験するってことは、皆離れて行くかもしれないんだよな…。

あてもなく不安定で、かつ突拍子もない考えが、季節外れの雪のように頭の中に降って来た。

離れるのは、寂しい。

でも、離れないなんて無理だ。

飛鳥は僕と同じ大学を受けるけど、志望校は皆バラバラだ。

世の中に大学が一つしかなければいいのに。…これはさすがに言いすぎか。

でも、もっと皆と一緒にいたいのは事実だ。

…そんな僕を支えてくれるのは、一体誰なんだ…?

自分自身に問いかけたが、もう答えは心の中で出ていた。
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