カノジョノカケラ
「始め!」

試験官さんの声で、僕達受験生は一斉にテスト用紙をはためかせた。

続々と出題される問題を、脳内OSフル回転で解いて行く。一問終わったら、また一問。終わりなんて気にしていられない。時間配分を考えている時間があったら、一点でも多く、点数をもぎ取っていかないと。

ここは戦場だ。生半可な戦略では勝てない。

全部の問題を解き終わったが、まだ十分ほど時間が余っている。

「見直しするか…。」

ささやき声にもせずにつぶやき、僕はもう一度最初から問題をできる範囲で解きなおしていった。

「そこまで!」

試験官さんの声が、試験開始時と同じように響く。カラカラとペンの置かれる音もそれに続く。

「ふぅ…。」

感覚的には一瞬だったが、実際にはかなりの長丁場だ。疲れが溜まっている。

「どうでした?」

飛鳥が小声で尋ねる。

「一応全部埋めたけど、自信ないな…。」
「全部埋めたんですか!?…やっぱりすごいです、太陽さん…。」
「たまたま運がよかっただけだよ。」

結果が発表されるのは、バレンタインよりは前だ。

この結果によって、チョコレートの味も変わってくるだろう。
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