カノジョノカケラ
そして、今日は合格発表の日。
「大丈夫かな…。」
「大丈夫だって。頑張って来たし、試験の時も全力出したんだろ?」
不安そうな飛鳥に僕がかけたのは、精いっぱいの気休めの言葉。でも、これでも飛鳥の心はだいぶ安定しただろう。
時計を見る。あと五分で、会場の門が開く。
「よっと…。」
爪先立ちになり、先の方を見ようとする。だが誰もかれもが僕と同じことをしているので、視界は相変わらず人々の顔や衣服だけだ。
あと五分で分かるというのにこうも見たくなるのは、これでこれからの人生のほぼすべてが決まる、ということが分かっているからだろう。
「澄鈴ちゃん…受かってると思います?」
「あ…じゃあ、電話してみるか。」
「はい!」
ケータイを取り出し、耳に当てる。呼び出し音が、何かのカウントダウンに聞こえた。
「もしもし?」
「おう。」
「どうしたの?」
高端の声は、割と元気そうだった。行けたか。
「…受かった?」
「へ?」
「いや、だから、東大。」
声のトーンが変わらないままに、高端はとんでもないことを口にした。
「…無理だった。」
「え…。」
隣にいる飛鳥も、僕の表情を見て自らの表情を曇らせていた。
「ちょっ…ゴメン、よく聞こえなかった…。」
「だから、落ちちゃったの、私。」
「大丈夫かな…。」
「大丈夫だって。頑張って来たし、試験の時も全力出したんだろ?」
不安そうな飛鳥に僕がかけたのは、精いっぱいの気休めの言葉。でも、これでも飛鳥の心はだいぶ安定しただろう。
時計を見る。あと五分で、会場の門が開く。
「よっと…。」
爪先立ちになり、先の方を見ようとする。だが誰もかれもが僕と同じことをしているので、視界は相変わらず人々の顔や衣服だけだ。
あと五分で分かるというのにこうも見たくなるのは、これでこれからの人生のほぼすべてが決まる、ということが分かっているからだろう。
「澄鈴ちゃん…受かってると思います?」
「あ…じゃあ、電話してみるか。」
「はい!」
ケータイを取り出し、耳に当てる。呼び出し音が、何かのカウントダウンに聞こえた。
「もしもし?」
「おう。」
「どうしたの?」
高端の声は、割と元気そうだった。行けたか。
「…受かった?」
「へ?」
「いや、だから、東大。」
声のトーンが変わらないままに、高端はとんでもないことを口にした。
「…無理だった。」
「え…。」
隣にいる飛鳥も、僕の表情を見て自らの表情を曇らせていた。
「ちょっ…ゴメン、よく聞こえなかった…。」
「だから、落ちちゃったの、私。」