カノジョノカケラ
「…そうか…。」
「何で安堂が落ち込んでんの?」
「いや、その…頑張って来ただろ?…僕もその姿見てきたから、報われてないのを知ったのが辛くて…。」

電話越しでも分かる。

高端は、僕のショックをどうにか和らげようと、あえて無理して喋っているのだ。本当は、落ち込んで、泣いて、一番ショックを受けているはずなのに。

「…ありがと。」

短い言葉だったが、かすかに声が震えているのが分かった。

「安堂って…結構優しいんだね…うぅっ…。」

そして、とうとう泣き出してしまった。僕は驚きはしなかった。だって本来、今は泣いているべき状況なのだから。

「泣いていいよ。」

僕には、高端を慰めることなんてできない。東大になんて挑んでないから、高端のショックが分からない。

こんなありきたりかつ拙い言葉しか、今の高端にかける言葉を持ち合わせていなかった。

…これが、落ちるってことか…。

高校に一発合格した僕には分からないものだった。

仲間がこうして散って行くのが、こんなにも辛いものだとは。

もしかしたら、自分が落ちた時よりも辛かったりするのかもしれない。

そして、高端との電話が繋がったまま、会場の門は開かれた…。
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