片恋キックオフ
*瑞姫*
「杏里! 移動しよ?」
わたしは音楽の教科書を持って、杏里の机をぽんと叩いた。
教室ではまだご飯を食べてる人もいる、お昼休み。
だけど城川くんの姿は見えない。
「早くない?
でも向こうでも話せるもんね!
行こうかっ」
「うん!」
杏里と一緒に教室を出る。
わたしたちの校舎の隣の校舎の2階に音楽室があって。
隣の校舎には、中庭の間の渡り廊下を通って行く。
「そういえば、杏里はピアノ弾けるんだよね?
わたし、聞きたい!」
「うん。
でもさー習ってたの中3までだよ?
もう下手かもだけどねっ」
「でも聞きたいっ」
懇願すると杏里は笑顔で頷いた。
ピアノが弾けるってすごいよね。
わたしも弾いてみたいけど、そればかりは運動よりもできなさそう。