片恋キックオフ





*瑞姫*





———ピーッ





ホイッスルが青空いっぱいに響く。
…キックオフの合図。





わたしは木の下でぼーっと試合を眺める。





———探そうと思ってなくても。
勝手にキミはわたしの目にピックアップされる。





「……頑張れ…」





声は届かなくても、気持ちは届いてるよね?
…応援するから。
誰にも負けないくらいのエールを送るから。





次は、湊くんが頑張る番だよ。









「瑞姫ー!」




後ろから高い声が聞こえて、振り返ると。
片手にお茶のペットボトルを持った杏里が走ってきた。





「ついでに瑞姫の分も買って来ちゃった!」




「ありがとうっ」




「自販機行ったらね〜?
林先生がいてさ、『私服で学校に来るな!』って怒られたんだけど。

サッカーの観戦って言ったら簡単に許してくれた」





林先生とは、風紀の先生で。
学校1と言っても過言ではないくらい嫌われている。





「ふふ、そうなんだ。

大変だったね?」




「んー。 まあ、大丈夫!」





杏里が笑顔でVサインをした。





そんなとき、わたしたちの高校のベンチから大きな声が聞こえて。
わたしはコートのほうに向き直した。





「わ! すごい攻めてんね…」





杏里が言った通り。
わたしたちの高校のチームがすごい攻めていた。





もちろん、トップの湊くんもすごく攻めている。





…やっぱり、かっこいいや。





すごく一生懸命で。
もう…キラキラして見える。





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