片恋キックオフ
時折吹く風がすごく寒いけど。
一生懸命な湊くんを見ていたらそんなのどうってことない。
「お! 入れた!」
湊くんじゃないトップの人がゴールにボールを入れた。
杏里はなんかすごく喜んでる…。
「…あの人、誰?」
わたしはまだ同じクラスの子くらいしか把握できていないから、他のクラスの子ならわかんないや…。
「隣のクラスの、野村くん」
「ふぅん。
わたし、初めて聞いたなあ」
「……」
返事が返って来なくて、隣を見ると。
杏里はただ真っ直ぐに誰かを見つめていた。
…それは、頭を撫でられたりしてみんなの輪の中にいる、野村くん。
もしかして?
「好きなの?」
「んな…! そ、そんなこと…」
頬を赤らめる杏里。
もー、わたし応援するってさっき言ったばっかなのにー…。
「応援するからねっ」
「…あ、ありがと……」
そんな顔の赤くなる杏里を見たことがないから、すごく新鮮で。
なんだか、杏里の恋する姿を見ていると。
わたしも嬉しくなる。