片恋キックオフ
「杏里…!
わ、わたしも行ってくる…」
「わかった」
校舎に入っていく湊くんを追いかける。
なんでケガなんか……っ。
「湊くんっ」
私服で学校に入るのは気が引けるけど。
いまは怒られたっていいもん。
…湊くんと話したいから。
保健室に入っていく湊くんの名前を呼びながら、わたしも入る。
「瑞姫ちゃん」
湊くんに肩を貸していた男の子。
同じクラスで確か湊くんとも仲のいい…。
「えと、沢口くん…」
「あのさ、保健の先生いないみたいだから。
シップとかだけしてあげて?
俺さ、戻らなきゃだから」
申し訳なさそうに言う沢口くんの言葉に何回も頷く。
「わかった!」
「うん、よろしくね。
湊ー、俺行くから」
「…あぁ」
沢口くんは少し微笑むと、保健室から出て行った。