片恋キックオフ
「多分ね、瑞姫は…土踏まずらへんで止めてるのかもしれないね。
優しくやることもポイントだよっ」
「そうなんだ! 杏里ちゃん、わたしにボール蹴ってもらってもいい?」
杏里ちゃんの緩いボールが転がってくる。
右足をちょっと斜めにすればいいのかな?
足元に来たボールをソッと止めると、さっきとは全く違って。
ピタッと動きを止めた。
球技とか、体育でやるとき いつもできなくて、諦めちゃってつまんなかったけど。
こうやって少しでもできるようになると、嬉しくなって…なんだかサッカーが楽しくなってくる。
早く…杏里ちゃんみたいに蹴れるようになりたい…!
「上手いじゃん!
じゃー次は、インサイドキックかな?」
「……い、いんさいど…」
「ほら、こう言うやつ」
杏里ちゃんはエアーでボールを蹴るように右足を動かした。
…あれ? ……え?
まさか、みんなこうやって蹴ってるの?
「わ、わたし…つま先で蹴ってたかも…!」
「ほんと?
あー。 もう、あたしのばか!
最初に教えろって話だよね!
ごめんね、瑞姫」
「いーのいーの!
わたしがなんも知らないだけだから!」
笑って杏里ちゃんを見ると、杏里ちゃんも笑ってくれた。