片恋キックオフ
「じゃあ、あたしの真似できる?」
「真似?」
「うん。 ほら、こうやってー…蹴る!」
エアーでやる杏里ちゃんの真似をして、わたしも足の形を作ってみる。
んー、難しい。
こんな難しいの、よくみんなできるね…。
やっぱりわたしは運動は苦手みたい。
「まあ、ゆっくり意識しながらやればいいと思う!
というか…こんなのしか教えられなくてごめんね……。
あたし、技術的に上手いほうじゃないし。
上手いと言えば…。 ほら、あそこにいるポニーテールの子、蘭(らん)がすごいの」
杏里ちゃんが指を差したところにいたのは、友達と喋ってる黒髪のサラサラのロングをポニーテールをした女の子。
わたしは…パサパサの茶髪のセミロングをポニーテールにしてるけど。
ほぼ、真逆って感じ…。
羨ましいなあ。
「蘭はちなみに10番だから…上手いってことね」
「へぇ…そうなんだっ。
すごいんだねー」
「あたしよりか、蘭のほうがいいと思うけど?
いいの? あたしなんかで…」
蘭ちゃんを羨ましそうな目で見る杏里ちゃん。
上手な人のことを羨ましがったりするのはわかるけど。
わたしにとって杏里ちゃんもすごい上手なんだけどなあ。
「うん! 杏里ちゃんが迷惑じゃなければ…!」
「え?迷惑なんかじゃないよ?
じゃあ、毎日…時間があるときは教えるね?」
「ありがとう!」
杏里ちゃんは嬉しそうに微笑んだ。
杏里ちゃんの笑顔、好きだなあ。
変な例えだけど、周りに花が咲くような…ふわっとした笑顔。
疲れてても癒される。