片恋キックオフ
「瑞姫」
「…え?」
実李ちゃんはわたしをまっすぐに見つめて名前を呼んだ。
あれ、いま…呼び捨てで呼ばれた?
「瑞姫って呼ぶね。
みんな呼び捨てなのに、瑞姫だけちゃん付けは変だもん。
それに、プレーするとき『ちゃん』は邪魔だもん」
技術的には認められたわけじゃないけど。
なんか…存在っていうか、メンバーとして認められた気がして嬉しい。
「うん! もちろんいいよ!」
「じゃあ、あたしも瑞姫って呼ぶ。
瑞姫も蘭でいいよ。
ちゃん付けなんてくすぐったくて嫌」
「うん!」
杏里、蘭、七海、実李、さくら、唯(ゆい)、桃子(ももこ)、有彩(ありさ)、春名(はるな)、未来(みく)。
みんないろんな色に染まってる。
みんながわたしをメンバーだと認めてくれてる。
なんだか嬉しくて。
もっともっと上手くなって、技術的にも認めてもらいたい。
「わたしなりに、1ヶ月…精一杯頑張るね!」
みんなに向けて言うと、みんなは力強く頷いてから笑顔になった。