片恋キックオフ
「どうしたの?」
「…なんか、上手くならないなって。
どんなに頑張っても、やっぱり…才能ないのかなって」
「才能は関係ないよ?
……じゃあさ、あいつに教えてもらえば?
どっかのジュニアユースだったって聞くし」
「………あいつ?」
誰のこと?
首を傾げて杏里を見ると、杏里は廊下側の1番後ろの席を指差した。
「……えっと、確か…城川(しろかわ)くんだっけ?」
「そうそう。
男子サッカー部 部長でエースの城川 湊(みなと)。
あいつに教えてもらえば、上手くなれるんじゃない?」
教えて…もらう…。
城川くんはいつも机で寝てて、誰かが話しかけても冷たく返されるってクラスの子に聞いた。
そんな彼に…教えてもらえるのかなあ?
「わかった。 あとで聞いてみるっ」
「え? ……本気?」
「だって、杏里が言ったじゃん。
それに…上手くなりたいもんっ」
「おーそっかそっか。
頑張ってね? めげないようにね?」
「う、うん!」
そんなに城川くんと話すのは大変なのかな?
こうと決まれば、絶対教えてもらうもん!