片恋キックオフ
わたしは袋からピンクのスパイクを取って、ローファーから履き替えた。
んー、まだかなあ?
遅いなあ……。
校舎の白い壁にもたれかかって待っていると、視界の端に城川くんがうつった。
「待たせて悪い」
「ううん、大丈夫だよ。 …えと、ありがとうっ」
城川くんの手にはボールがふたつあった。
「とりあえず、パス練習からな」
「…うん!」
この頃、インサイドキックもトラップも…前よりかは上手くなったはずだもん。
だけど上手い人から見たら…、やっぱ下手だもんなあ。
「い、行くよ…っ」
わたしはボールを芝生の上に置いて、右足を後ろに引いた。
オレンジ色の空の下。
キミとの裏庭での秘密の練習が始まる…———。