片恋キックオフ
*湊*
「…なにこれ。 全然できてねぇよ」
藤宮から届いたスローボールは威力もなくて、それに蹴る姿勢もダメダメ。
俺が言った言葉に藤宮は顔を暗くした。
あーもう、なんて言えばいいんだよ。
「教えるから。 …な?」
「う、うん!」
俺がそう言うと藤宮は、顔をぱぁっと明るくさせた。
女子はうるさいし、めんどくさいし。
だけど藤宮は違う気がする…。
ただサッカーを上手くなりたくて俺に話しかけた女子なんて初めてだから。
「いいか? 俺が蹴るの見てろよ?」
そう言うと藤宮はコクンと頷いた。
俺は白い壁に向けてボールをふつうに蹴る。
「わぁ…! すごい!どうやってるの?」
「どうって…、別にふつうだけど」
「杏里が言ってた通りすごいんだね!」
そんなべた褒めしなくてもいいし…。
サッカー部のヤツはみんなこんなだし。